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ユキユキと呼ばれています

女子大生です。映画がたまらなく好きです。頭のなかが支離滅裂なので、日々思ったことを言語化しています。

【感想】『沈黙 サイレンス』スコセッシさんのガチを堪能できるヘビー級作品

映画まつり

 

沈黙 -サイレンス-2016年公開

監督:マーティン・スコセッシ

出演:アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライバー、浅野忠信イッセー尾形

www.youtube.com

海外版の予告に感動してしまい、公開日当日(2017/1/21)の朝イチで鑑賞。

ちなみに遠藤周作による原作は、高校時代に読んだけど、恥ずかしながらあまり覚えていないので、ストーリーの比較とかは書いてないです。

以下、ネタバレも含まれております!

 

-あらすじ-

布教のため日本に赴いたイエズス会神学者フェレイラが、日本のキリスト教弾圧により棄教したとの知らせが、弟子であるロドリゴとガルペの元に届く。彼らはその噂を突き止めるため、また、日本での布教の種を絶やさないように日本に潜入するが、やがて長崎奉行所に捉えられてしまう。数々の信者が殺されていくなか、日本人のキリスト信仰を止めるためには宣教師自身が棄教するべきだと迫られるロドリゴ。自分の信仰を守るべきなのか、それとも暴力によって苦しむ人々を助けるため、自分の信仰を捨てるべきなのか。ロドリゴは神に答えを問うが、神は「沈黙」を通すのみであった…

 

キリスト教文学として知られている遠藤周作の原作。

しかし「暴力によって自身の信じるものが捻じ曲げられてしまうこと」、「弱い人間が強い人間に押しつぶされてしまうこと」といったこの作品におけるメッセージは、宗教だけではなく、現代においてとても普遍的なものに思えます。

同時にこの作品は、観てる側の文化教養を試す作品でもあるでしょう。

ただ「善」と「悪」を対比した作品では無く、文化の違いから、善きものも悪しきものとして認識されてしまうジレンマが描かれていて、ダイバーシティグローバリズムを謳ってる今日において、こうしたジレンマが歴史の背景から生まれてしまうことを理解することは大切なことです。

なので、この作品を観て「日本は嫌な国だなぁ」で終わってしまうのは非常に勿体無いと思います。

30年近い構想を練ってこの作品を作ったと話題ですが、まさに30年経った今だから響く作品になっているのではないかなぁ、と思うばかりです。

 

✔︎ 終始続く緊迫感と暴力描写にヘトヘト

初日の初回(9時)に行くと、やはりおじいちゃんおばあちゃんだらけ。

おじいちゃん達は基本朝型なのでね…想像通りでした。

そんなご老人方から上映終了後に真っ先に聞こえた声は「疲れた。」(笑)

若干20歳の私でも見終えた後にグワッと肩が重くなるくらいでしたから、

おばあちゃんおじいちゃんには相当ヘビーだったのでしょう…

 

このヘトヘトになる原因は終始続く「緊迫感」にあるのでしょう。

遠藤周作の原作で流れを知っているとはいえ、映像内で描かれるスピード感、ロドリゴが狂っていく姿のアップダウンに思わず一緒につられてしまうというか、目が離せなくなってしまうのですよね…

そこがやはり小説では紡ぎ出せない、映画ならではの部分であります。

 

そして映画だからこそ描ける部分といえば「暴力描写」。

スコセッシ監督の得意分野でもあるわけですが、グロいのダメな私にとってはちょっとキツいラインのグロさでありました。

それがただの血がバッシャー!のグロい映像だからというのではなく、視覚的にも精神的にもキツい暴力描写なんですよね。

この精神的な暴力描写は小説でも伺えることですが、やはり映画だと更にそこにビジュアル的な暴力描写も加わって、居た堪れないグロさになります。

加瀬亮さんの首ブッチンのシーンだって、何がイヤって、そのシーンの前に皆んなで安堵した姿が描かれているのと、その後の小松菜奈さんの叫び声が後味悪くさせるので、本当トラウマになります。

突然首を切られるまで、警備の人と「どこ出身だ?」と談話しているシーンを混ぜるのとか本当に嫌らしい。

つまりは当時の人間の惨さ、信仰心を持っているだけで命が軽く見られてしまう残酷さが描かれているのですが、そこを表面的なグロさだけで描かず、内面的なグロさに上手く繋げているところは、今まで観てきたスコセッシさん作品にはあまり見ない演出であったなぁと思います。

まぁ、晴れた日の朝イチに観るのはアカン映画ということです…

 

✔︎ 日本映画を彷彿とさせるアメリカナイズな映像

今回の作品の舞台は日本!ということで、前半30分は除いて、日本文化が全編を通して描かれています。

そして何よりチープでエセっぽくない日本、ガチな野蛮臭〜い日本が濃く、濃く、描かれています。

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今村昌平監督『楢山節考』(1983年)より

海外製作でここまで日本臭さが描かれているのは、やはりスコセッシ監督が日本映画をしっかり観て研究したからでしょう。

特に監督は今村昌平のファンということもあり、『楢山節考』のような日本人の野蛮な気性を真似たんだろうな〜と映画を見ながら感心してしまいました。

 

日本の風情に関しても、日本映画をたっぷり観て研究したのだなぁということが分かります。

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溝口健二雨月物語』(1953年)より

海を船で移動するシーンの霧といい不気味さは、非常に『雨月物語』っぽいなぁと。

後にNHKドキュメンタリー「巨匠スコセッシ“沈黙”に挑む~よみがえる遠藤周作の世界~」を観て納得したのですが、「『雨月物語』を意識した」とスコセッシ監督自身が解説しておりました。

徹底的に日本映画を模倣としたことで、普通のハリウッド作品には無い日本臭さが描けたのだなと思います。

 

しかし!

やはり製作は海外…ということで部分ごとに「そんなわけないでしょ!」とツッコミたくなるの箇所もチラホラ…

 海と夜空が映るシーンでは満天の星がキラキラ…

そんなに濃くキラキラに星が観えるのはありえないよ…!と一瞬ツッコんでしまったり、

処刑所?で十五夜を祝すシーンがありますが、「月が綺麗だな〜」と言って見上げた月がバカデカい…!!

確かに大きく見えるのは分かりますが、ちょっとSF映画っぽくて違和感が…

十五夜を強調するために大きくしたのでしょう…

しかし分かりやす〜い派手派手感がやっぱりハリウッド…

決して「日本の"奥ゆかさ"が分かってない!」と言ってるわけでは無く、ここまで日本らしさが描かれていると、作り手が外国人ってことを忘れそうになってしまうので、要所要所で外国の映画らしさが出ていて、ちょっと安心してしまいました。

 

✔︎ 誰が良いとか選べない!役者勢の気合がすごい

イッセー尾形さんの演技がすごい!と海外で話題になっていますが、その評判に首をブンブン縦に振ってしまうほど素晴らしかった。

誰にも負けない存在感でございました。

TBS系火曜10時の『カルテット』にも出てらっしゃいましたが、あんなチョイ役もったいない!とか今になって思います。

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アカデミー賞取るか?と話題にもなってますが、取って欲しいな…

 

アダム・ドライバーはジム・ジャームッシュの新作『パターソン』 でも主役、ドラマも絶好調とノリに乗ってますが、本作の不健康すぎる体型といい、浜辺のシーンとか見てるだけで痛々しい姿から役者魂が伺えます。

主演のアンドリュー・ガーフィールドも信仰心に疑念を感じ、みるみる自分を見失っていく姿を演じるのは相当難しかったことでしょう。

原作からどうロドリゴを紡ぎだすのか…頑張ったね…と声をかけたくなります(笑)

 

厄介なキチジロー役に窪塚洋介さん。

個人的にレゲエのイメージ強いので、どうなのか?と思ったけれど気持ち悪いくらいオドオドした姿から、あの普段の見た目のイカつさが無くて「やっぱり役者さんだなぁ!!」と感心し直してしまいました。(妙に上から目線でゴメンなさい!)

日本人勢も皆さん気合が感じられ(特に塚本晋也さん…!)、

もっともっと皆さん海外で活躍してほしいなと思うばかりです。

 

4.2点 / 5点満点中

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