不快感で満ち溢れている

フィクションかもしれません

生きもの

「これはどうしたらいいですか」自分の考えで足りるようなつまらない質問で、あなたとの会話を始める。あなたは相変わらずのムスッと結んだ口と尖った眼で私を一瞥する。ああ、面倒くさいと思われた。その冷たくて硬い一瞬で、わたしの心はこの床を突き抜け、地の底まで落ちてしまうんだ。「こうしてください」と口先で足りることを、私の左側にジワリと寄り添い、あなたは声を使わず、指先で教えてくれる。私が一番欲しい答えをあなたは最初から分かっている。声をかけてからたった数秒で、私は谷底に転げ落ち、深い切り傷を残したかと思えば、山のてっぺんに登りつめ、肺を震わせ瑞々しい酸素を味わうこともできる。左側からジワリと伝わる生温かさを逃したくない。些細な欲望が私の人差し指に伝わり、指はあなたの手の甲に乗っかった。「まだ早い」とあなたの手はゆっくりと、撫でるように私の指から離れていく。しくった。もう触れられないかもしれない。失敗した私の指は、戸惑いを隠すようにゆっくりと違う場所に置かれる。こうなることを分かっていて、この場所に連れ込んだかのように、今度はあなたから手首の裏を重ねてきた。トカゲの腹ように冷たく、滑らかだった。それは人間の形をした生き物だった。わたしはこの生き物に捕らえられた虫だ。虫はあくまで冷静に、自分の命を守るため、その罠からさらに遠くへ逃げた。生き物はあっさり、追いかけてこなかった。どうせ死ぬんなら、あのまま食われるのがよかった。あのままペロリと呑み込まれてしまいたかった。こうして虫はもう何日も、生き物の罠に、自ら足をかける暮らしをしている。生き物が本当に殺してくれるかも分からないのに。